このブログはポケモンファンの風花藍流による、私設運営サイトです。過度な期待は管理人が逃げ出す恐れがあります。大変危険ですので、くれぐれも御控えください。音痴なのに、最近UTAUに嵌っているらしい。
by yuki_ten
魔法少女イルア 1章 それはあまりにも突然で……(4)
「わぁ~、これ可愛いね」
桜が舞う商店街。太陽が真上から傾き、気温も頂点を過ぎた時間。
3人の少女は、小物店の中にいた。
ここの小物店は、可愛いものがいっぱいあることが学校でも有名で、よく話題にも上がっていた。
アイルも1度来てみたかった。今日ここに来れたことを二人の友人に感謝した。
「アイルぅ! これいいんじゃない?」
ツインテールが大きく跳ねる様子は、小動物の尻尾のようだ。
楽しくて仕方がないと、全身が表している。
「うん! すッごく可愛い!」
それは、赤い宝石のようなものがブレスレットに付けられていて、まるで本物のアクセサリーのようだった。
「じゃあ、私これ買ってこよう」
「ボクはこれ!」
二人並んでレジへ向かう。他に並んでいる人がいなかったのですぐに買えた。
ちょっと、あのブレスレットは高かったけど、とても綺麗で気に入っている。
「あれ? まだ見てたの?」
隣の少女が声を掛けた。自分の双子の姉が、目を輝かせながら未だに見て回っていることに驚いているらしい。
「うん……、どれも可愛くて迷っちゃうから……」
恥ずかしそうに、頬を掻きながら答えるショートカットの少女。
実はこのなかで彼女が1番、可愛いものが大好きだった。
「優柔不断って言うんだよ。早く決めてね」
「うん、ごめんね」
怒っているような言葉だが、その言葉達には優しさが含まれていた。
本当に仲がいい姉妹だ。
アイルは、この2人を見ていてそう実感した。
「じゃあ、これ買ってくる」
1つのキーホルダーに決めたらしい。
「アイルちゃんは今のうちの他の店を見て回ってていいよ。携帯電話があれば、見失っても連絡取れるし」
そのままレジに向かうと思っていたら、振り向いてアイルにそう提案した。
色々考えてくれたのだろう。連絡のこととかも考えて理由にしたのは彼女らしい。
もう1人の少女は既にレジの列に並んでいた。
「じゃあ、お言葉に甘えて。先に他の店に行ってるね」
「うん、私達も終わったらすぐ行くから」
手を振り、アイルはその店を後にした。
外は、まだ夕暮れには早いが、だんだん気温も下がってきていた。
季節は春だが、吹き抜ける風は昼用の薄着では少し肌寒い。
商店街を歩く人々の数は、段々減ってきていた。アイルが来たときは同じような年齢の人などもいたが、今では買い物帰りの主婦なのが多く目に付く。
アイルは、小物店の前にある洋服店の前にいた。
ショーウィンドウに飾られた女性の服装が、とても綺麗に思えたからだ。
(こういう服もいいな~)
ちょっと想像してみたが、なかなか似合うかもしれない。
(でも、これ大人用だから、大きくて着られないけどね……)
モデルの人形は、完全に成人女性の大きさだった。
そして、アイルの身長は同じ年の少女と比べても少し低いくらいだ。
苦笑いとともに、その店から離れようとした。
『――――』
アイルの頭に突然、少女の声のようなものが響いた。
(私を呼んでいる?)
妙な声に誘われるように、アイルは商店街を進んだ。
気付くと、アイルは商店街から外れた道に出ていた。
そこは、ちょっとした遊歩道で、朝とかにはペットと散歩する人の姿がよく見られる場所だった。緑が茂っていて、道路はアスファルトでなく固めた土で出来ており、散歩にはうってつけの場所である。
頭に響く声は、だんだんと輪郭を帯びてきている。
『――――っ!』
一際響くその声には、すごく強い思いが込められていた。
そして、アイルが辿り着いた先にいたのは、道の真ん中で倒れている1匹の小動物だった。
今まで本物を見たこともなかったが、それは狐と呼ぶ動物だった。
そこまでは、普通にありそうな光景だ。
でも、目の前の狐には、おびただしい量の血液が付着していた。
小学生の少女から見ても、その狐はとてもじゃないが生きているとは思えない。
しかし……。アイルは確信していた。この狐に呼ばれていたのだと。頭じゃなく、心で感じたことだった。
「大丈夫? 狐さん」
声に反応するかのように、目の前の狐が顔を上げた。
狐と目が合った。アイルは不思議と、そう感じた。
「すごい血……。すぐに病院に運んであげるからね」
安心させるように優しく声を掛けた。
(えっと……、この場合は動物病院だっけ?)
携帯電話を取り出すも、いつものようにはボタンを撃てない。
考えも上手く纏まらず、気持ちだけがくるくると回っていた。
アイルは今、すごく焦っていた。
それも当然。アイルの短い人生の中で、こんな事態は1度もなかった。
「えっと……うわぁっ!」
ボタンを押していた携帯電話に、突然着信が入った。そのタイミングに、思わず携帯電話を落としそうになった。大慌てで着信相手を見てみると、今1番かかって欲しい人からだった。
『もしもし、アイルちゃん? 今何処の店にいるの?』
さっき別れた双子の姉の方だった。
「あ、あのね、今路地に来ているんだけど、そこでね、狐さんがね――」
『とりあえず、落ち着いて。何か起こった事だけは分かったから』
電話越しに聞こえる友人の冷静な声に、アイルは少し平静を取り戻した。
「なんかね、路地に血だらけの狐さんが倒れているの。なんだか焦って、パニックになっちゃって……」
さっきよりも、上手く言えた気がした。今までの焦りが嘘のようだった。
『うん、とりあえずは分かった。これからそっちに向かうから、その間に動物病院に連絡してて。時間がもったいないし』
「うん、分かった」
友人は、やるべきことを明確にしてくれた。焦りも消えている。
アイルは、狐の方に顔を向けた。いつの間にか狐の目は閉じていた。少し、危険な状態なのかもしれない。
(絶対、助けるからね)
アイルはそう誓って、再び携帯電話のボタンを押し始めた。
小さな命を救うために―――。
桜が舞う商店街。太陽が真上から傾き、気温も頂点を過ぎた時間。
3人の少女は、小物店の中にいた。
ここの小物店は、可愛いものがいっぱいあることが学校でも有名で、よく話題にも上がっていた。
アイルも1度来てみたかった。今日ここに来れたことを二人の友人に感謝した。
「アイルぅ! これいいんじゃない?」
ツインテールが大きく跳ねる様子は、小動物の尻尾のようだ。
楽しくて仕方がないと、全身が表している。
「うん! すッごく可愛い!」
それは、赤い宝石のようなものがブレスレットに付けられていて、まるで本物のアクセサリーのようだった。
「じゃあ、私これ買ってこよう」
「ボクはこれ!」
二人並んでレジへ向かう。他に並んでいる人がいなかったのですぐに買えた。
ちょっと、あのブレスレットは高かったけど、とても綺麗で気に入っている。
「あれ? まだ見てたの?」
隣の少女が声を掛けた。自分の双子の姉が、目を輝かせながら未だに見て回っていることに驚いているらしい。
「うん……、どれも可愛くて迷っちゃうから……」
恥ずかしそうに、頬を掻きながら答えるショートカットの少女。
実はこのなかで彼女が1番、可愛いものが大好きだった。
「優柔不断って言うんだよ。早く決めてね」
「うん、ごめんね」
怒っているような言葉だが、その言葉達には優しさが含まれていた。
本当に仲がいい姉妹だ。
アイルは、この2人を見ていてそう実感した。
「じゃあ、これ買ってくる」
1つのキーホルダーに決めたらしい。
「アイルちゃんは今のうちの他の店を見て回ってていいよ。携帯電話があれば、見失っても連絡取れるし」
そのままレジに向かうと思っていたら、振り向いてアイルにそう提案した。
色々考えてくれたのだろう。連絡のこととかも考えて理由にしたのは彼女らしい。
もう1人の少女は既にレジの列に並んでいた。
「じゃあ、お言葉に甘えて。先に他の店に行ってるね」
「うん、私達も終わったらすぐ行くから」
手を振り、アイルはその店を後にした。
外は、まだ夕暮れには早いが、だんだん気温も下がってきていた。
季節は春だが、吹き抜ける風は昼用の薄着では少し肌寒い。
商店街を歩く人々の数は、段々減ってきていた。アイルが来たときは同じような年齢の人などもいたが、今では買い物帰りの主婦なのが多く目に付く。
アイルは、小物店の前にある洋服店の前にいた。
ショーウィンドウに飾られた女性の服装が、とても綺麗に思えたからだ。
(こういう服もいいな~)
ちょっと想像してみたが、なかなか似合うかもしれない。
(でも、これ大人用だから、大きくて着られないけどね……)
モデルの人形は、完全に成人女性の大きさだった。
そして、アイルの身長は同じ年の少女と比べても少し低いくらいだ。
苦笑いとともに、その店から離れようとした。
『――――』
アイルの頭に突然、少女の声のようなものが響いた。
(私を呼んでいる?)
妙な声に誘われるように、アイルは商店街を進んだ。
気付くと、アイルは商店街から外れた道に出ていた。
そこは、ちょっとした遊歩道で、朝とかにはペットと散歩する人の姿がよく見られる場所だった。緑が茂っていて、道路はアスファルトでなく固めた土で出来ており、散歩にはうってつけの場所である。
頭に響く声は、だんだんと輪郭を帯びてきている。
『――――っ!』
一際響くその声には、すごく強い思いが込められていた。
そして、アイルが辿り着いた先にいたのは、道の真ん中で倒れている1匹の小動物だった。
今まで本物を見たこともなかったが、それは狐と呼ぶ動物だった。
そこまでは、普通にありそうな光景だ。
でも、目の前の狐には、おびただしい量の血液が付着していた。
小学生の少女から見ても、その狐はとてもじゃないが生きているとは思えない。
しかし……。アイルは確信していた。この狐に呼ばれていたのだと。頭じゃなく、心で感じたことだった。
「大丈夫? 狐さん」
声に反応するかのように、目の前の狐が顔を上げた。
狐と目が合った。アイルは不思議と、そう感じた。
「すごい血……。すぐに病院に運んであげるからね」
安心させるように優しく声を掛けた。
(えっと……、この場合は動物病院だっけ?)
携帯電話を取り出すも、いつものようにはボタンを撃てない。
考えも上手く纏まらず、気持ちだけがくるくると回っていた。
アイルは今、すごく焦っていた。
それも当然。アイルの短い人生の中で、こんな事態は1度もなかった。
「えっと……うわぁっ!」
ボタンを押していた携帯電話に、突然着信が入った。そのタイミングに、思わず携帯電話を落としそうになった。大慌てで着信相手を見てみると、今1番かかって欲しい人からだった。
『もしもし、アイルちゃん? 今何処の店にいるの?』
さっき別れた双子の姉の方だった。
「あ、あのね、今路地に来ているんだけど、そこでね、狐さんがね――」
『とりあえず、落ち着いて。何か起こった事だけは分かったから』
電話越しに聞こえる友人の冷静な声に、アイルは少し平静を取り戻した。
「なんかね、路地に血だらけの狐さんが倒れているの。なんだか焦って、パニックになっちゃって……」
さっきよりも、上手く言えた気がした。今までの焦りが嘘のようだった。
『うん、とりあえずは分かった。これからそっちに向かうから、その間に動物病院に連絡してて。時間がもったいないし』
「うん、分かった」
友人は、やるべきことを明確にしてくれた。焦りも消えている。
アイルは、狐の方に顔を向けた。いつの間にか狐の目は閉じていた。少し、危険な状態なのかもしれない。
(絶対、助けるからね)
アイルはそう誓って、再び携帯電話のボタンを押し始めた。
小さな命を救うために―――。
by yuki_ten
| 2008-04-29 14:00
| 魔法少女イルア
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魔法少女イルア
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独白
雪天道場
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